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【EDの原因・リスクファクター】年代ごとの分類傾向やEDの要因となる病気

  • 2023年4月26日
  • ED
ED

EDは様々な原因によって引き起こされる病気です。20代や30代の若い方が発症する可能性も少なくなく、EDを治療していくには、原因を知ることがなによりも大切と言えます。

そこで今回は、EDの原因を年代別・疾患別に詳しく解説します。

年代別に見るEDの原因比率

世代比率年代原因の傾向
若年層27.2%20代精神的なストレス
30代精神的なストレス
壮年層55%40代精神的なストレス、動脈硬化・神経障害
50代動脈硬化・神経障害、性欲減退

EDは、成人男性の約3割が悩んでいると言われています。EDは単に勃起が起こらなくなるだけでなく、男性としての自信を損なわれる可能性があります。なぜなら、勃起不全となるEDの症状が表れると、異性との交際に不安・悩みが生じて自信を失ってしまうからです。

異性との交際に消極的になり「EDの症状が出てからパートナーができない」など、生活の支障になっているケースも少なくありません。EDは年齢を重ねるごとに発症率が増していき、ED患者の7割以上が40代以上の壮年層です。60代では、2人に1人がEDを発症しており、加齢とともにEDになる男性が増えていきます。

しかし、ED患者の27.2%が20代・30代の若年層であり、若い世代でもEDを発症する方は思いのほか多いです。では、なぜEDが起きるのでしょうか。EDの原因について、年代別に理由を確認してみましょう。

20代でEDになる主な原因

20代といえば、異性と交際する方も多く、EDとは無縁と思われがちです。しかし、実際にはED患者の8%は20代の方が占めています。20代で生じるEDの原因の多くは、精神的なストレスやプレッシャーによるものが要因です。

ある程度リラックスした状態で性行為に臨まなければ、十分な勃起は起こりにくくなります。20代の若い方は性行為の経験が少ないケースも多く、性行為自体に強い緊張感を覚えて、満足な勃起ができなくなるケースも少なくありません。

さらに、性行為や異性の扱いで失敗すると、過去の失敗談がストレスになり「うまくやらないといけない」「勃起しなかったらどうしよう」とプレッシャーがかかってしまいます。まだまだ性行為に対して未熟な20代では、過去の失敗や強いストレスが原因で、勃起不全が生じる悪循環に陥っている方も多いです。

30代でEDになる主な原因

20代の頃より体力は衰えてくるとはいえ、30代はまだまだ若い世代です。しかし、30代に突入するとEDに悩む方は、20代に比べて一気に増えていきます。30代に見られるEDも、20代と同じく、精神的なストレスやプレッシャーが主な原因です。もちろん、20代の頃のように性行為自体に苦手意識があったり、緊張感が強すぎたりすることが精神的な重荷となってEDを引き起こすケースもあります。

一方で、30代は仕事や家庭でも、責任ある立場になりやすい世代です。仕事や生活上のストレスが原因で、EDになってしまう可能性があるため、注意しましょう。また、近年ではいわゆる「妊活」に対するプレッシャーから「勃起しないといけない」と性行為自体をストレスに感じてEDになってしまう男性も大勢います。

40代でEDになる主な原因

中年に差し掛かる40代は、身体に様々な変化が生じるものです。健康診断で、高血圧や脂質異常症などの生活習慣病を指摘される方も増えてきます。実は、加齢とともに指摘されやすくなる生活習慣病は、血管が硬く狭くなる動脈硬化を引き起こす原因ともなります。

そもそも勃起は、陰茎内の海綿体に血流が流れ込み膨張することで起きます。動脈硬化が生じると陰茎への血流が低下するため、海綿体の膨張が起きずにEDが発症しやすくなるのです。40代になると生活習慣病に起因するEDも増えてくるため、日頃から健康維持に気を配らなければなりません。

また、加齢に伴い勃起時の硬さや持続時間が低下していることを自覚し、性行為にストレスやプレッシャーを感じるようになる方もいます。「もう若くないから勃起しにくい」「性行為が苦手かも」と、性行為自体に苦手意識を感じるようになれば、EDが発症してしまうでしょう。このように、40代は身体的な変化と精神的なストレスの両面から、EDを発症する方が増えてくる年代と言えます。

50代でEDになる主な原因

50代は、高血圧や糖尿病、脂質異常症など、生活習慣病を患う方が40代より増える世代です。つまり、生活習慣病が原因でEDに悩む方も増えることになります。

この年代になれば、性行為自体へのストレスやプレッシャーを感じる方は少なくなってきますが、「性欲減退」という新たな問題が生じることも少なくありません。なぜなら、性欲の元となる男性ホルモンの分泌量は、加齢とともに減少していくからです。

男性ホルモンの分泌量は、10代後半頃から30代にかけてピークを迎えますが、年齢が上がるごとに分泌量は低下します。50代頃になるとこれまでのように性欲がわかず、性的な刺激を受けてもセクシャルな気分にならず勃起不全が起きやすいです。50代になると、生活習慣病の増加やEDを発症する方も少なくないのです。

(※1)

EDが引き起こされるメカニズム

EDが引き起こされるメカニズムに対して、通常の勃起とEDを比較してご紹介します。

通常の勃起

(※2)

EDの場合

(※2)

EDの原因は大きく分けて3種類

EDの原因は、「心因性」「器質性」「混合性」の3種類に分けられます。それぞれについて、詳しくご紹介します。

EDの種類特徴主な疾患や症状原因として多い年代
心因性(機能性)ED精神的なものが要因うつ病/不安症/男性更年期/男性不妊症20代・30代
器質性ED身体的なものが要因心血管系疾患/高血圧/糖尿病30代・40代・50代
混合性ED心因性、器質性が合わさったもの

心因性ED

心因性EDの特徴
併発する主な疾患や症状うつ病/不安症/男性更年期/男性不妊症
多くみられる年代若年層(10代・20代)/30代/40代

器質性ED

器質性EDの特徴
原因となる主な疾患心血管系疾患/高血圧/糖尿病
多くみられる年代30代/40代/50代

混合性ED

混合性EDの特徴
原因となる主な疾患高血圧/糖尿病/脂質異常症
多くみられる年代40代/50代

具体的なEDの原因・リスクファクター

上述しましたが、EDの原因は、「心因性」「器質性」「混合性」の3種類に分けられます。ここではさらに詳細な要因について、ご紹介します。

リスクファクター     特徴
糖尿病血管障害を引き起こす糖尿病患者では、35%から90%にEDが発生している
加齢世界中の疫学調査に共通して、加齢はEDの最重要リスクファクターとされている
運動不足による肥満肥満度(BMI)が増加するにつれEDリスクが上昇、BMIはED悪化と正の相関を示している
心血管疾患・高血圧神経・血行動態・生理活性物質などのバランスが崩れ、EDを引き起こすと考えられている
喫煙陰茎海綿体や陰茎の内皮障害を起こす可能性がある
テストステロン低下テストステロン(男性ホルモンの一種)とEDの関係に一定の見解はないが、勃起に必須のホルモンと言われている
慢性腎臓病
下部尿路症状
慢性腎臓病による血流障害・神経障害やホルモン異常などがED罹患率の上昇を招いていると考えられる
神経疾患勃起が神経によって制御されることから、中枢神経・末梢神経を傷害する神経疾患はEDを引き起こすとされている
外傷・手術脊椎損傷などの外傷や手術による局所への神経ダメージがEDを引き起こすと考えられている
精神疾患情緒的な問題やストレスなど精神疾患はED発症の罹患率が高いとされている
薬剤常用する薬剤の副作用によりEDを発症。中枢神経や末梢神経に作用する薬剤、循環器系に作用する薬剤、消化管に作用する薬剤など
睡眠時無呼吸症候群REM睡眠障害による夜間勃起現象の障害、テストステロン低下、交感神経過剰興奮など諸説あり

糖尿病

糖尿病は、日本人の代表的な生活習慣病の一つです。単に血糖値が高くなるだけでなく、動脈硬化や神経障害など様々な合併症を引き起こします。糖尿病はEDを引き起こしやすい病気のひとつです。実際、糖尿病患者の35%から90%の方が、EDに悩んでいるとの結果が出ています。

さらに、糖尿病を発症すると免疫力が低下してしまうため、亀頭包皮炎など合併症を発症しやすくなります。その結果、性欲が薄れたり、性行為に抵抗感を持ったりとEDを引き起こす原因が増えてしまいます。動脈硬化や神経障害などによる器質的EDだけでなく、心因性EDを引き起こしてしまうこともあるのです。

加齢

加齢もEDの代表的な原因の一つです。男性は年齢を重ねるごとにED発症率が上昇します。日本人では50代頃から発症者が増え、60代後半以降では60%以上の方がEDに悩んでいるほど、加齢はEDの大きな原因です。加齢がEDの原因となる理由は、生年齢を重ねると活習慣病などの目立った病気がなくても、神経の働きや血管の柔軟性を低下させるからです。

また、加齢による男性ホルモン分泌量の低下、性行為に耐えうる体力の低下などが、EDの原因となっているケースも珍しくありません。

運動不足による肥満

運動不足は、全身の血行を悪化させてしまいます。さらに、運動不足による肥満は、器質性EDの大きな原因となる動脈硬化を助長する要因です。そのため、運動不足で肥満に陥っている方は、EDを発症しやすく、BMI(肥満度)が高いほど、EDになるリスクが高くなるとのデータもあります。

また、EDに悩んでいる肥満の方が運動をして減量を図ると、EDの症状が改善傾向になるとの報告もあるため、肥満はEDの原因と言えるでしょう。ED治療の場でも薬に頼った治療だけではなく、適度な運動習慣を身に付けるよう運動療法が勧められます。EDを改善するために、治療薬だけに頼らず適度な運動習慣を身につけて、肥満を解消しましょう。

心血管疾患・高血圧

高血圧は動脈硬化を引き起こすため、EDの原因となります。アメリカの研究では、ED患者の約40%は高血圧を合併しているとのデータが公表されています。また、高血圧の治療薬には副作用としてEDを引き起こすものもあり、器質性EDと薬剤性EDが同時に起こる可能性があるため要注意です。

一方、狭心症などの心血管疾患を発症している方は血行が不安定なため、EDの発症率が高くなります。心血管疾患や高血圧はEDの原因となるため、治療に専念して病気とEDを完治させましょう。

喫煙

タバコは、様々な有害物質を含みます。そのため、長期間に渡る喫煙習慣は全身に様々な影響を及ぼし、EDの原因ともなります。なぜなら、喫煙習慣により動脈硬化を引き起こされて、EDが発症しやすくなるからです。

また喫煙は、自律神経の一つである交感神経を、過度に刺激します。交感神経が刺激されると血管が収縮するため、陰茎の海綿体に血液が十分に流れず、EDの原因となります。

テストステロン低下

男性ホルモンの一種であるテストステロンは、筋肉や骨格の増強などに影響するホルモンです。テストステロンの分泌量とEDとの関連はないとの見解もありますが、テストステロンは勃起に関わる神経や血管、海綿体組織を正常な状態に保つために必須なホルモンと言われています。実際に、テストステロンの分泌量が少なくなった方に、ホルモン補充を行うとEDが改善するとの報告もあるため無関係とは言い難いです。

テストステロンの減少がEDを引き起こす可能性があるため、バイアグラやシルデナフィルなどED治療薬には、テストステロンを増加させる作用が含まれています。EDを改善したい方は、テストステロンを増加させる治療薬を服用してみましょう。

慢性腎臓病・下部尿路症状

慢性腎臓病患者の70%はEDであると報告されているほど、慢性腎臓病はEDとの原因となります。腎臓の機能が低下することによる血行不良、神経障害、テストステロン分泌量の低下などが、EDの原因と考えられていますが、はっきりしたメカニズムは分かっていません。

また、尿閉や残尿感などの下部尿路症状がある方も、EDを発症しやすいです。下部尿路症状による骨盤周囲の血行不良や繰り返される尿意などが原因で、交感神経へ過剰な刺激が与えられてEDが発症してしまいます。

神経疾患

EDを引き起こしかねない主な神経疾患
脳卒中・多発性硬化症・てんかん・パーキンソン病

正常な勃起が生じるには、勃起に向けて脳や神経が正常に働かなければなりません。そのため、脳や神経にダメージが生じる病気を発症すると、EDになる可能性が高くなってしまいます。脳や神経にダメージを与える病気では脳卒中患者の約50%、パーキンソン病にいたっては約70%の患者がEDです。

また、神経疾患に用いられる薬には、副作用としてEDを引き起こすものがあるため注意しましょう。

外傷・手術

EDを引き起こしかねない主な精神疾患
骨盤内臓器の手術・骨盤外傷・足の骨折・脊髄損傷

外傷や手術によって勃起に必要な神経・血管がダメージを受けると、EDを発症することがあります。特に、性的な刺激によって脳から陰茎への司令が送られる脊髄を損傷すると、高確率でEDを引き起こしてしまいます。

また、前立腺・直腸・膀胱などの手術も、EDを引き起こすこと原因となります。なぜなら、手術で勃起に必要な神経にダメージを与えてしまう可能性があるからです。手術後にEDを発症する確率は術式によっても異なりますが、最大で88%の確率でEDになってしまいます。

精神疾患

EDを引き起こしかねない主な精神疾患
うつ病・不安症・PTSD

うつ病や不安症などの精神疾患の多くは、心因性EDを引き起こします。精神疾患がEDを引き起こし、男性的な自信が損なわれることで、さらに精神疾患が悪化するという悪循環に陥っている方も少なくありません。ストレスやプレッシャーを感じやすい精神疾患は、EDの原因となる厄介な病気です。

薬剤

EDを引き起こしかねない主な薬剤
降圧剤・抗うつ剤・前立腺肥大症治療薬(α遮断薬と 5α還元酵素阻害薬)
非ステロイド性抗炎症薬(non-steroidal anti-inflammatory durgs: NSAIDs)

EDは上記のような薬の副作用によって、引き起こされることがあります。特に降圧薬や前立腺肥大症治療薬は、ちょうどEDの発症率が上がる年代の方が多く飲んでいる薬です。何か薬を飲み始めてから、勃起に悩むようになった場合、治療薬の副作用が原因かもしれません。

薬が原因でEDになっている可能性がある場合は、一人で思い悩まずに担当医に相談するようにしましょう。

睡眠時無呼吸症候群

睡眠時無呼吸症候群は、睡眠障害が引き起こされるだけではありません。交感神経の過剰刺激、テストステロンの分泌低下、酸素不足による血管へのダメージなど、身体への悪影響が引き起こされます。これらの症状は全てEDの原因となり、睡眠時無呼吸症候群はEDを引き起こしやくなる病気です。

また、睡眠時無呼吸症候群の治療をおこなうことで、EDの症状が改善したケースも発見されています。

(※2)

EDの原因は複合的でさまざま!悩んだら医師へ相談を

EDの原因はさまざまな理由が考えられます。加齢やストレス、他の病気による合併症や生活習慣など、EDの原因はさまざまです。そのため、ED治療の際にはまず、「どのような原因でEDが生じているのか」正しく判断しましょう。

単にED治療薬を服用しても、効果がない可能性があるため治療法は一概にまとめられません。EDに悩んだら、自己判断で治療や生活改善をおこなうのではなく、医師に相談して治療するようにしましょう。

<参考記事>

※1)日本新薬「EDの原因とタイプ」

https://www.ed-care-support.jp/abouted/about03.php

※2)日本泌尿器科学会「ED診療ガイドライン第3版」

https://www.urol.or.jp/lib/files/other/guideline/26_ed_v3.pdf